やさしい介護学

12年間の介護職体験談を思いのままに綴ります。

疥癬、感染、大混乱!

疥癬(かいせん)が集団感染に発展した話

 老人保健施設で働き始めて3年を過ぎた頃のお話しです。いつものように利用者さんの清拭を行っている時、4人部屋に入院しているある利用者さんの身体に、発疹ができていることに気づきました。

 

 体に発疹ができることは日常的によくあることだったので、いつものようにオイラックスという痒みに効く軟膏を塗っていたのですが、どうも痒みが治まる様子はなく、日に日に発疹部分の面積が広がり、かゆみの程度も増しているようでした。

 

 さすがにこれはおかししということで、詳しく検査をしてもらったところ、【疥癬】に感染していることが判明したのです。

 

 【疥癬】に感染していることが判明するとすぐに、他の利用者に感染しないよう1人部屋に隔離し、予防対策を行ったのですが、時すでに遅し、数日後、4人部屋にいた他の3人にも感染していたことが判明しました。

 

 更にさらに、その数日後、感染の勢いは治まらず、60人いた患者さんの約半分に当たる、30人まで感染が拡大してしまったのです!

 

 では、【疥癬】とは、いったいどのような感染症なのでしょうか?

 

疥癬とは?

 疥癬とは、【ヒゼンダニ】という肉眼では見えない0.4mm程の小さなダニの感染によって、発疹やかゆみがみられる疾患です。

 

 ヒゼンダニは、人の皮膚の角質層に寄生し、卵を産み付け、約1~2か月の潜伏期間を経て、腋下やお腹の周辺、陰部などに発疹が現れます。吸血性ではありません。

 

 特徴としては、とにかく我慢できないほどかゆみが強く、また指の間に【疥癬トンネル】と呼ばれる細長い線上のぶつぶつが現れます。これは、角質を餌にして角質内でどんどんヒゼンダニが増えている状態です。

 

感染経路は?

 最初に疥癬が発覚した方は、入院間もない方だったので、入院後に発症し、看護師・介護士が媒介者となった可能性があります。

1か月間の対応

 30人も感染してしまったので、その後の対応、対策がとにかく大変でした。ざっと、まとめると!

 

①30人を隔離する

2~4人部屋を数部屋用意し(なるべく端っこの部屋)、感染患者を隔離し、治療中は面会も制限していました。また、入室する際、専用のエプロンを着用し入室していました。ベッド、床頭台、私物の荷物など、全部移動しなければならないので、かなりの大移動でした!

 

②毎日入浴

入浴する約1時間前、首から下全身、べっとべとに【ダニを殺す薬】を塗布し、シャワー浴を実施し、入浴後、かゆみ止めの薬をこれまたべっとべとに塗布していました。感染者は午前中に集中し、午後は一般の方が入浴するなどして、感染者がこれ以上出ないよう防止策を立てながらの実施となりました。

 

③毎日リネン交換

シーツ、包布、枕カバー、衣類全て、毎日交換していました。当然感染症扱いになるので、ビニール袋に入れて、一般のリネン類とは区別していました。

 

④毎日そうじ

ピューラックスという、塩素系の殺菌消毒剤を使用し、病室の床、ベッド周り等を毎日清掃。

 

以上の対応を約1か月続けた結果、見事に疥癬はなくなりました。とにかくしんどかった!

 

約1か月の間、利用者さんは、本当に苦しかったと思います。とにかく強烈に痒いようで、中には血が噴き出るまで掻きむしる方もいたほどです。

 

しかししかし、これだけでは終わらなかったのです。

 

スタッフが感染してしまった!!!

 集団感染が落ち着こうとしていた時、スタッフの3名が感染してしまったのです。

 

 我々スタッフは当然感染しないよう、細心の注意を払い対応していたのですが、やはり入浴の時や移乗の時などに、どうしても利用者さんの肌に触れることや、脱いで間もない衣類に触れることがあるため、感染リスク0%に抑えることは不可能に近いのです。

 

 更に、そのスタッフの1人が、子供とご主人にまで感染してしまったのです。本当に気の毒でした。患者さんのために一生懸命に働いた結果、スタッフの家族にまで被害に及んだ今回の集団感染。精神的にも肉体的にも、本当に大変な1か月でした。

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