やさしい介護学

12年間の介護職体験談を思いのままに綴ります。

本当にあった怖い話 ~介護病棟編~

番外編 ナースコールの恐怖

 今回は、実際に僕が体験した背筋がぞ~~~っとしたお話をします。

 

 その前に、僕はあまり怖い話が好きではありません。何故かというと、基本的にあの類の話は信用していませんし、胡散臭く感じるものが多いし、単純に怖いのが嫌いなんです(笑)!

 

 ホラー映画自体、何故お金を払ってまで怖い体験がしたいのか意味不明です。一度、韓国のホラー映画(携帯が鳴るやつ・・・?)だったと思うのですが、あまりの恐怖で死にそうになりました(笑)!なのでそれ以来、一度もホラー映画の類は見てません。

 

 それと、子供のころ、真昼間の12時から、週1回【あなたの知らない世界】という視聴者から寄せられた実話を映像化した番組があり、その映像がとにかく乾ききったというか、安っぽいというか、なんか殺風景なんですね。

 

 なのに、めっちゃ怖い(笑)!怖すぎて正午だというのに、絶対に1人では見られないくらい怖い(笑)! お分かりの様に、僕の恐怖に対するレベルはそんなもんです(笑)!

 

 介護士になってからは、一緒に働いているスタッフに、霊感の強い子がいて、たまに、「あっ、あそこの廊下の隅っこに子供がいる」とか、夜勤中の真っ暗の廊下で「看護婦さんの歩いている足だけが見える」とか、普通に「おじいさんやおばあさんが見える」と、教えてくれるのですが、僕にはさっぱり見えません。

 

 だから、単純に【見えない物は信じない】ことにしたのです。だって、信じてしまうと怖くて仕事ができないですから・・・(笑)!

 

 少し前置きが長くなりましたが、見えない物に対してどちらかというと否定的な僕ですが、どうしても説明がつかない体験をしてしまったんです。

 

     ある男性患者の死

 施設で働き始めて3年が経とうとしていた時です。【305】号室に、80歳前後の池田さん(仮名)という男性が入院していました。癌を患っており、生活のほとんどをベッド上で過ごすことが多く、日を追うごとに、やつれていくのがわかりました。

 

 池田さんは、そんな状況の中でも、スタッフに対していつも笑顔で話しかけてくれるとても優しくてかわいいおじいちゃんでした。

 

 おトイレは、元気な時は自分で歩いて行ってましたが、癌が悪化するにつれ、徐々に歩くことができなくなり、ベッド上で済ませることが多くなってきました。

 

 おしっこがしたくなると、ナースコールを鳴らして尿瓶(しびん)を持ってくるようスタッフに依頼し、排尿が終わったら再度ナースコールを鳴らして持っていくよう指示していました。

 

 池田さんの変わった所というか、面白いところは、だいたい決まった時間に尿意があり、日勤帯は3時間おきにナースコールが鳴り、尿瓶の要求があります。特に夜間は秒単位の正確さで、必ず夜中の0時と朝方の5時にナースコールが鳴り、スタッフが尿瓶を持っていくことが習慣化していました。

 

 夜明けに池田さんからの【305】のナースコールが鳴れば、「あっ、もう5時か!」といった具合で、我々スタッフの間では、暗黙のルールになっていました。

 

 そんな変わった几帳面さを持っていた池田さんですが、病魔は容赦なく池田さんの身体を蝕んで行き、日に日に衰弱して行く姿が見てとれました。

 

 そんな状況の中、僕が当直に当たった時のことです。池田さんの様子を伺うと、意識が薄れ、呼吸も苦しそうです。ドクターからは、「今夜が山だろうね。」とのこと。いつものナースコールが今日は鳴りません。尿瓶では対応できないと考え、オムツを装着することにしました。

 

 夜間0時を過ぎた頃だったと思います。呼吸が止まったアラームが静かな病室に響き渡ります。すぐに当直のドクターが駆けつけ、心肺停止、死亡が確認されました。

 

 池田さんには身内がいなかったこともあり、すぐにスタッフによる死後処置(エンゼルケア)を行い、葬儀屋を手配した後、午前2時ごろに別室の死体安置室へと移動しました。

 

     【305】号室のナースコール

 60名が入院する介護病棟だったので、池田さんが亡くなった後とはいえ、喪に服する暇などなく、他の患者さんの排泄介助や朝食(経管栄養を含む)準備で走り回っていたときのことです。

 

 ちょうど5時ナースコールが鳴ります。携帯には【305】と表示されています。池田さんの病室はすでに誰もいませんから、スタッフが何かの用事で呼んだのかなと思い、電話に出ましたが返答がありません。排泄介助を終え、すぐに305号室へ向かうと、誰もいません。「おかしいな?」 他のスタッフに確認するも、誰も押していません。

 

 当直のスタッフは、ドクター1名、看護師1名、介護士2名で行い、基本的にドクターは緊急時以外部屋からは出てきませんので、3名以外は誰もいません。「きっと、何かの間違いか、機械の故障かな?」と思い、その場を立ち去りました。しかししばらくすると、またナースコールが鳴ります。携帯を確認すると【305】と表示されています。

 

 今度は3人で駆け付け、305号室を確認するもやっぱり誰もいません。「おかしいな?誰もいないよね?まさか、池田さんのおしっこかな?」と3人で冗談を言っていると、また携帯が鳴り、【305】と表示されています。その後、切っても切ってもピンポ~ン、ピンポーンと【305】が鳴りやまず305号室と表示された携帯を持った僕の手はがたがたと震え、3人とも顔が引きつり、顔面蒼白状態です。

 

 いよいよ恐怖でどうすることもできなくなり、とにかくナースコールを止めようと、305号室のナースコールの電源の接続部分を引っこ抜くと、ようやく鳴りやみ、我々3人は少しずつ落ち着きを取り戻していきました。

 

 そしてその場で3人で手を合わせて、池田さんのご冥福をお祈りしました。僕は心の中で、「池田さん、もうこの世からは解放されたので、あの世でゆっくりしてください。」とつぶやきました。しばらくしてナースコールを元に戻すと、【305】のナースコールは鳴らなくなりました。

 

 今思い返すと、あのナースコールは機械の故障だった可能性も考えられますが、僕は、池田さんが我々スタッフに何か言い残したことがあったように思っています。「今までありがとうね!」と伝えたかったのでは?と都合がいいように考えています(笑)!

 

 皆さんも、明け方のナースコールにはくれぐれもお気を付けてください(笑)!