やさしい介護学

12年間の介護職体験談を思いのままに綴ります。

喉詰め事故、発生!

          食事介助中に起こった出来事

 施設で働き始めて10日が過ぎた頃、少しずつ3大介護(食事介助・入浴介助・排泄介助)にも慣れてきて、この日も昼食介助を行っていたときのことです。

 

 いつものように、元気な方は車椅子に乗ってもらい、食堂へ案内した後、お部屋でご飯を食べる方の食事を各病室へ配膳をし、食事介助が必要な方のところへ、数名のスタッフと手分けして、介助を行っていました。

 

 僕が介助に入った病室は4人部屋で、そのうち2人が経管栄養で胃瘻から食事を摂っている方でした。残り2人は口から食事ができる方で、1人は、自分の力で食事を摂れない全介助が必要な方と、もう1人は明治生まれの100歳を超えている、おばあさんでした。

 

 その100歳越えのおばあさんは、【田川 めい】さん(仮名)といい、とても小柄で色白のかわいいおばあさんでしたが、全く目が見えない盲目の方でした。ご飯の形状は、普通食で、おかずのみ食べやすいように一口サイズに切ってある状態で、提供していました。

 

 目が見えないため、配膳時にメニューの説明とおかずが置いてある場所を簡単に説明すると、「ありがとう、いただきます。」と言って、いつも「あ~おいしい、おいしい、ありがたいな~」と独り言をつぶやきながら、スプーンやお箸を使わずに素手で器用に食べる方でした。

 

  僕はというと、全介助が必要な患者さんの食事介助をしながら、田川めいさんの食事を摂っている様子を見守っていました。この日の昼食のメインは、鶏肉のてりやきで、田川ばんちゃんのお皿には、一口サイズに切った鶏肉がのってあり、それを器用に指の感覚で探りながら、一つひとつ口へ運んでいました。

 

 しばらく経って、田川ばんちゃんの様子を伺うと、なんか様子が変です。ぶつぶつ独り言を言いながら、いつも穏やかに食べているのですが、この日はいつも以上に静かです。しかも少し上の方を向いて、ピクリとも動きません。「何か考え事でもしてるのかな?」と思い、もう少し観察していると、顔色がだんだん赤くなり、赤色を通り越して、紫色に変わっていきます。「田川さん、大丈夫ですか?」声をかけても反応がありません。「めいさん、大丈夫?」「めいさ~~ん!」大声で名前を呼んでも、身体をゆすっても全く反応なし!

 

 「これは、もしや窒息?!のどに詰まってる?!どうしよっ!どうしたらいい!?」気持ちは焦るばかりです。働き始めて10日しか経ってない自分に、どうすることもできませんでした。とにかく誰かを呼ぼう。そう思い、病室を出て、廊下から応援を呼ぶことにしました。「誰か来て~!めいさん、窒息してます!」ありったけの大声で、叫ぶと、何やらただ事ではないと察知した先輩介護士や、看護師が走って駆けつけてくれました。

 

 先輩介護士はすぐさま背中をタッピング(背中を丸めた状態にして肩甲骨と肩甲骨の間の部分を叩く)し、その後、吸引装置(自分の力で痰、唾液、鼻水が出せないときに吸引する装置)で、軌道を確保した後に吸引すると、何か大きい塊が出てきました。すると、めいばあちゃんに、大きなむせ込みの反応が見られ、顔色もだんだん元の色白に戻り、一命を取り留めたのでした。吸引したものを確認すると、鶏肉の塊であることが判明しました。

 

 その後、すぐにドクターが駆けつけ、事の詳細を説明すると、一言、「君の介助や見守りが悪いというよりも、食事形態に原因があると思うから、見直した方が良いよ。」とのこと。

 

 その後も、上司や看護婦長に報告をしましたが、特に怒られることなく、注意程度で済みました。ただ、再発防止のため、【アクシデント報告書 ※1】を書いて提出するよう指示を受けました。

 

 とにかく僕はというと、ホッとした感情の次に、「知識不足は命取りになる!」と心の底から痛感しました。そこで、先輩や上司から「ヘルパー2級は持ってるよね?」という質問を何回か受けたことがあり、さすがにこのまま「未経験なんです~」では通用しないことがわかったので、すぐにでも受講しようと、この時決意したのでした。

 

 ※1 アクシデント報告書とは、医療や介護の現場で、何らかのミスを犯し、患者さんや利用者さんの心身に影響を及ぼし、検査や処置が必要となってしまった時に、誰が、いつ、どこで、何を、どのようにして、事故が起こり、どのように対応したかを所定の書式に沿って記録し報告するものです。その後、同じ様な事故が起きないよう、再発防止策を立て検証し、その後評価をします。