やさしい介護学

12年間の介護職体験談を思いのままに綴ります。

水分介助 食事介助 2

     配膳

 配膳車が到着すると、各患者さんの席まで食事を配っていきます。食堂まで出てきて食事をされる方は、ある程度自分の力で食べることができますが、患者さんの中には、介助や援助が必要な方もいます。

 

 片腕に麻痺がある方は、利き腕の方で食べやすいようにトレーの角度を変えたりします。また、麻痺のある方は麻痺側に傾くことがあるため、クッションやタオルを入れて、体幹をまっすぐ維持できるように調整したりします。

 

 握力が弱い方は、お箸を持つことが困難なため、介護用スプーンを使う方もいます。

 

介護用スプーンにも色々な種類があり、とても軽いものや、すくいやすいように、角度が調整されているものや、フォークとスプーンが一体になっているものなど、なるべく快適に食事ができるように、その方の能力の補助的な役割を担ってくれているようでした。

 

 一通り食事のセッティングが終わったら、3階へ戻って、病室配膳が必要な方の援助に向かいます。

 

 3階も同じように、配膳車を移動しながら各病室へ食事を届けます。病室のベッド上で食事をする方は、基本的に食堂まで移動することが困難な方で、それぞれ事情があるようでした。

 

金属カニューレ、両腕拘束、でもご飯は食べる!?

 ある男性の例でいうと、喉には金属カニューレ(※1)が挿入されており、両腕はひものようなのもので、ベッドサイドにくくりつけられている状態で、スタッフが食事介助していました。

 

 どうしてこういうことになったかを先輩介護士に聞くと、「自分で、カニューレを引っこ抜くから」ということでした。カニューレが挿入されてても、食事はできる事を知り、驚きと疑問が沸き起こりました。「うまいこと痰は排出できないし飲み込めないのに、食事はできるの?水分も食物も喉を通っているのに?なぜ?本当にカニューレが必要?」わからないことだらけでした。

 

 なおもその方の存在がとても気になって見学していたら、食事形態が他の方と違っていることに気づきました。食事の内容が全てドロドロになっていたのです。ご飯もおかずもデザートも全てがドロドロ。介助者はスープを与えるように、そのドロドロとした食べ物を口元で持っていくと、その男性は、すするようにして飲み込んでいました。

 

 「おいしいですか?」と聞くと、ニコッと笑って、こくりっと頷きます。「何が一番おいしいですか?」と聞くと、少し困った様子。すると、先輩介護士が、「この人カニューレ入ってるから、しゃべられないよ」(※2)と聞き、困惑しました。「カニューレ入れたらしゃべれないの?じゃーこの男性は、しゃべれないし、両腕拘束されたまま、ベッド上で1日を過ごすの?この人の幸せって一体なに・・・???」またまたわからないことだらけになりました。

  他にもある、食事介助が必要な方

 その他にも、両目とも失明された方や、両手両足が固まってしまって、自力で動かすことは困難だけど、介助するとご飯は食べることができる方や、首から下が全く動かせない、いわゆる四肢麻痺の方や、認知症の方などがおられ、介護者の介助方法は、その患者さんの使える能力、いわゆる残存能力を活かしつつ、事故が起きないよう、その方に合わせて介助する必要があるように感じました。

     配膳と下膳

 患者さん1人ひとりにゆっくりと時間をかけて介助するべきなのですが、介助が必要な方の人数と介助できるスタッフの人数を考えると、介助者が少ない時の方が圧倒的に多く、この日は食堂の見守りを含め、4人のスタッフが30人の患者の対応をしていましたが、見た限りでは、ゆっくりと患者さんに向き合える余裕がないように感じました。

 

 確かに、限られたスタッフの人数で、食事の用意→配膳→食事介助→下膳の流れを約1時間で行うとなると、1人の患者さんに10~15分が限界です。効率的に動くことが求められます。そのようなことを感じながら、食事介助の様子を、見守っているのでした。

 

※1 最近では、あまり金属カニューレは使用されていないようです。現在は、カフ付きのカニューレ、または 発声が可能なスピーチカニューレが主流のようです。)

 

※2 スピーチカニューレは、発声可能です。)