やさしい介護学

12年間の介護職体験談を思いのままに綴ります。

喉詰め事故、発生!

          食事介助中に起こった出来事

 施設で働き始めて10日が過ぎた頃、少しずつ3大介護(食事介助・入浴介助・排泄介助)にも慣れてきて、この日も昼食介助を行っていたときのことです。

 

 いつものように、元気な方は車椅子に乗ってもらい、食堂へ案内した後、お部屋でご飯を食べる方の食事を各病室へ配膳をし、食事介助が必要な方のところへ、数名のスタッフと手分けして、介助を行っていました。

 

 僕が介助に入った病室は4人部屋で、そのうち2人が経管栄養で胃瘻から食事を摂っている方でした。残り2人は口から食事ができる方で、1人は、自分の力で食事を摂れない全介助が必要な方と、もう1人は明治生まれの100歳を超えている、おばあさんでした。

 

 その100歳越えのおばあさんは、【田川 めい】さん(仮名)といい、とても小柄で色白のかわいいおばあさんでしたが、全く目が見えない盲目の方でした。ご飯の形状は、普通食で、おかずのみ食べやすいように一口サイズに切ってある状態で、提供していました。

 

 目が見えないため、配膳時にメニューの説明とおかずが置いてある場所を簡単に説明すると、「ありがとう、いただきます。」と言って、いつも「あ~おいしい、おいしい、ありがたいな~」と独り言をつぶやきながら、スプーンやお箸を使わずに素手で器用に食べる方でした。

 

  僕はというと、全介助が必要な患者さんの食事介助をしながら、田川めいさんの食事を摂っている様子を見守っていました。この日の昼食のメインは、鶏肉のてりやきで、田川ばんちゃんのお皿には、一口サイズに切った鶏肉がのってあり、それを器用に指の感覚で探りながら、一つひとつ口へ運んでいました。

 

 しばらく経って、田川ばんちゃんの様子を伺うと、なんか様子が変です。ぶつぶつ独り言を言いながら、いつも穏やかに食べているのですが、この日はいつも以上に静かです。しかも少し上の方を向いて、ピクリとも動きません。「何か考え事でもしてるのかな?」と思い、もう少し観察していると、顔色がだんだん赤くなり、赤色を通り越して、紫色に変わっていきます。「田川さん、大丈夫ですか?」声をかけても反応がありません。「めいさん、大丈夫?」「めいさ~~ん!」大声で名前を呼んでも、身体をゆすっても全く反応なし!

 

 「これは、もしや窒息?!のどに詰まってる?!どうしよっ!どうしたらいい!?」気持ちは焦るばかりです。働き始めて10日しか経ってない自分に、どうすることもできませんでした。とにかく誰かを呼ぼう。そう思い、病室を出て、廊下から応援を呼ぶことにしました。「誰か来て~!めいさん、窒息してます!」ありったけの大声で、叫ぶと、何やらただ事ではないと察知した先輩介護士や、看護師が走って駆けつけてくれました。

 

 先輩介護士はすぐさま背中をタッピング(背中を丸めた状態にして肩甲骨と肩甲骨の間の部分を叩く)し、その後、吸引装置(自分の力で痰、唾液、鼻水が出せないときに吸引する装置)で、軌道を確保した後に吸引すると、何か大きい塊が出てきました。すると、めいばあちゃんに、大きなむせ込みの反応が見られ、顔色もだんだん元の色白に戻り、一命を取り留めたのでした。吸引したものを確認すると、鶏肉の塊であることが判明しました。

 

 その後、すぐにドクターが駆けつけ、事の詳細を説明すると、一言、「君の介助や見守りが悪いというよりも、食事形態に原因があると思うから、見直した方が良いよ。」とのこと。

 

 その後も、上司や看護婦長に報告をしましたが、特に怒られることなく、注意程度で済みました。ただ、再発防止のため、【アクシデント報告書 ※1】を書いて提出するよう指示を受けました。

 

 とにかく僕はというと、ホッとした感情の次に、「知識不足は命取りになる!」と心の底から痛感しました。そこで、先輩や上司から「ヘルパー2級は持ってるよね?」という質問を何回か受けたことがあり、さすがにこのまま「未経験なんです~」では通用しないことがわかったので、すぐにでも受講しようと、この時決意したのでした。

 

 ※1 アクシデント報告書とは、医療や介護の現場で、何らかのミスを犯し、患者さんや利用者さんの心身に影響を及ぼし、検査や処置が必要となってしまった時に、誰が、いつ、どこで、何を、どのようにして、事故が起こり、どのように対応したかを所定の書式に沿って記録し報告するものです。その後、同じ様な事故が起きないよう、再発防止策を立て検証し、その後評価をします。

3大介護とは?

     色々体験できた1週間

 全くの未経験から介護の仕事を始め、見たことも聞いたこともない体験をすることで、一時はどうなるかと思いましたが、先輩介護士にやさしく?導いてもらいながら、何とか1週間勤めることができました。

 

 たかだか1週間と思う方もいると思いますが、やっぱり最初の1週間の壁ってあるんですね!ま~、初日に絶対1年は辞めないと心に誓ったので、根性でもやり続けるという選択しかなかったのですが・・・(笑)で、簡単に1週間学んだ事をまとめてみたいと思います。

 

     食事介助

 入院している患者さんの一番の楽しみが、【食事】という方は少なくありません。入院中にできることは限られている上、身体に障害のある方や、病気の治療中で無理な動きが出来ないため、ベッド上で1日を過ごされる方も多く、3度の食事を待ち望まれている方が多くいました。また、逆に全く食事の意欲を失っている方も見受けられました。

 

 そこで我々スタッフが意識して行っていたことは、

①楽しく食事をしていただく。

②食べやすい環境を整える。

③安全に食事をすることができる。

 1人で食事できる方は、配膳と下膳のお手伝いをするだけですが、自分で食べることが困難な方に対しては、患者さんの身体機能や意識状態に合わせて、箸や器などの食器を福祉用具に変えたり、食べやすいように姿勢を整えたり、援助することが必要になってきます。

 

 また、食事の形状も、誤嚥(喉詰め)しないように、白米をおかゆに変更したり、おかずを小さく刻んだものにしたり、固形物を一切排除したソフト食やペースト食などを提供することもあります。

 

 また、治療食といって、患者さんの病状に合わせたメニューもあります。例えば、心臓食、腎臓食、糖尿病食、減塩食などです。

 

 一番大切なことは、患者さんの能力や病状に合わせて、なるべく快適に食べてもらうことだと感じました。

 

     入浴介助

  当施設では、患者さんの身体機能に合わせて、機械浴(中間浴・車椅子に座った状態で入るもの)、特殊浴寝台浴、寝たきりの方がストレッチャータイプのものに寝たまま入るもの)の2種類の機械を使って、週2回行います。

 

 入浴の目的をざっくり大きく3つのまとめると、

①清潔を維持する。

②リラックス効果が得られる。

③全身の状態を観察できる。

 とりわけ、寝たきりの方や、ベッド上で多くの時間を過ごされる方は、全身が凝り固まっている方が多いため、入浴することで、皮膚の毛細血管が広がり、血流の改善が期待できます。また、肩こりや腰痛などの痛みを和らげたり、筋肉の柔軟性を高める効果も期待できます。 

 

 最も注意しなければいけない点は、【浴室の事故】です。たぶん一番多いのではないでしょうか?転倒、転落、溺れなど、安全面に留意しながら介助する必要があります。

 

 特に足元が滑りやすくなっていたり、長時間の介助になると、室内の蒸し暑い温度の影響で、頭がボ~っとする時があるので、介助者自身の健康状態も客観的に観察する必要があると感じました。

 

     排泄介助

 一番多くの時間を費やすのが、排泄介助でした。定期的なおむつ交換に加え、排泄の要求かあるたびに、トイレ誘導やおむつ交換をする必要があります。

 

 トイレ誘導をして排泄できる方は、なるべく自立した排泄ができるように援助する必要がありますし、おむつ交換の訴えがある方は、長時間濡れたままの状態でいると、不快な上に、オムツかぶれの原因になるため、なるべく迅速に対応する必要があります。

 

 また、オムツを装着していることにプライドが傷ついている方もいますので、言葉がけやお気持ちを汲み取るといった配慮が必要になります。

 

     まとめ

 確かに、この1週間は3大介護のために働いているような気がしました。何もわからないまま、先輩介護士の後を追い、見よう見まねで患者さんお援助や介助を行い、あっというまに時間が経ったといった感じがします。わからないことだらけの1週間でしたが、明日からもめげずに頑張ろうと、心に誓ったのでした。

身体拘束

      つなぎ服

 昼食介助が終わり、下膳を済ませ、口腔ケアの介助も終わって、ホッとひと息つこうかと思ったその時、先輩介護士があるものを発見し、急いで病室の中に入っていきました。何か大変なことが起こったに違いないと感じ、先輩の後を急いで追いかけて訪室すると、何やら先輩が患者さんに注意をしていました。

 

 よく観察してみると、ベッド柵に何やら掛けてあります。さらに注意深く見てみると、失禁後のおむつを干すようにしてベッド柵に掛けられている状態でした。その様子を発見した先輩が、どうやら患者さんに注意をしているようでした。

 

 先輩に詳しいことを聞くと、その患者さんは失禁すると自らおむつをはずし、ベッド柵に失禁後のべっとべとに濡れたおむつを干す習慣があるようでした。その時点で発見できればいいのですが、ベッド上でおむつをはずした状態で失禁行為をされたら、ベッド上に尿や便が流れて、大変なことになる、との説明を受けました。

 

 その方は認知症で、尿意や便意(トイレに行きたいという感覚)を感じる能力が低下しているものの、失禁後の不快感には敏感なようで、失禁後におむつを干すという行為を繰り返しているようでした。

 

 そこで施設側は、その患者さんに【つなぎ服】という一見すると囚人服のような変わった服を着させていました。背中側にチャックが付いており、着ている本人は、脱ぎにくい構造になっています。また、おむつ交換などができるように、足元にもチャックが付いていました。その患者さんは、つなぎ服を着ているものの、足元のチャックを器用な手さばきではずし、おむつをはずしたため、スタッフに注意されているのでした。

 

    両手抑制、ミトン、キーパーベルト

 その他にも、施設内には患者さんの自由を制限しているような行為が見受けられました。例えば、両手、または片手にミトン(大きな手袋)を付けた人や、両腕をひもで縛り、そのひもをベッドにくくり付け、両腕の自由を制限しているものや、車椅子から立ち上がれないように、専用のベルトを付けている方もいました。

 

 また、ベッドを柵で囲い込み、出入りしにくい状態にしたり、片方のベッドサイドを壁にくっ付け、もう片方に柵を設置して、制限しているものもありました。

 

      身体拘束の目的

 施設や病院など、利用者さんや患者さんにひも抑制帯、ミトン、ベルトなどの道具を使用して、ベッドや車椅子に縛ったり、制限を与えることを【身体拘束】と言います。また、ベッドを柵で囲い出入りをふさいだり、薬を飲ませて動けなくする行為も身体拘束となります。では、これらの行為は何のために行われているのでしょうか?大きく2点にまとめてみました。

 

 ①危険を回避するため

 第一の目的は、危険回避であると思います。立つことができない状態なのに、立とうとして、ベッドや車椅子から転落、転倒してしまって、骨折したり、最悪、頭部など打ち所が悪ければ死に至ることがあるため、ベッドを柵で囲い込んだり、車椅子にベルトを付けて縛ります。また、自傷行為(自殺を含む)や他人に危害を加える危険性がある時にも、使用することがあります。

 

 ②治療のため

 経管栄養を胃瘻や鼻腔から注入している時や、点滴をしているときに、自己抜去しないために、両手をひもで縛ったり、ミトンを装着します。その他、精神疾患のある方に、薬物療法で対応することもあります。

 

     身体拘束【ゼロ】は可能か?

 身体拘束をしたい人は、たぶんいません。しかし、拘束しないと患者さんや利用者さんの安全を守ることは難しいし、治療に影響を及ぼすこともあります。簡単には解決できないとても難しい問題ですが、拘束は原則禁止と言われています。

 

 身体拘束【ゼロ】の実現は可能でしょうか?現実的に考えると、介護スタッフの数は増えていますが、高齢者の数は増える一方で、介護スタッフ不足は今もなお続いている状況です。介護者の介護負担の軽減のためにも、身体拘束せざるを得ない状況が発生しているのが現実なのです。

服薬介助と口腔ケア

     食後のお薬

 食事が終わる頃になると、看護師が昼食後のお薬を服薬介助するために、各病室を順番に回っていました。飲み込みに障害がない方は、そのまま錠剤や粉薬を渡して飲んでもらっていましたが、飲み込みに障害のある方は、前もって錠剤を粉砕し、コップの中にトロミ剤入りのとろっとろのお水に混ぜて、服薬の介助をしていました。

 

 お薬にも色んな種類があるようで、粉薬、液体の薬、カプセルの薬、張り薬、吸入の薬、漢方薬、点眼薬などがあり、それを食前薬や食後薬に分けて飲む方もいました。

 

 当然、病気になったりや普通に生活できなくなってしまった結果の入院であり、その病気を治したり、悪化しないためにお薬が必要であることは理解できるのですが、患者さん一人ひとりの薬の量がものすごく多いことにびっくりしてしまいました。

 

 多い方は、1回の服薬で数種類のお薬を、10錠以上飲んでいる方も珍しくありません。その量を朝、昼、晩、と寝る前に服薬するのです。何に効く薬なのか?何のために飲んでいるのか疑問に思ったので、すこしづつ調べていくと、ま~色んな病名に効くとか悪化を防ぐという薬が存在しました。

 

 今、頭に浮かんだだけでも、血圧を上げる薬、下げる薬。痙攣を抑えたり予防する薬。便秘にならないよう、お通じを良くする薬。腸内環境を調える薬。向精神薬躁うつ病)。糖尿病の薬。認知症の薬。痛み止めの薬。血液をサラサラにする薬。抗生薬。睡眠薬・・・と、本当にどんどん出てきます。

 

 その他にも、シップや塗り薬もあります。このような薬を複数飲んだり、付けたり、貼ったりしたら、逆に不健康じゃ~?副作用大丈夫?と、思ってしまいます。僕なら飲んでも風邪薬くらいなものなので、信じられない光景でした。

     口腔ケア

 看護師の服薬介助が終わると、食後の口腔ケアをします。この日も、先輩介護士に教えてもらいながら、実施することになりました。一般的には、洗面台で歯磨き後うがいをしますが、ここは病院の介護病棟、小さな洗面台はありますが、専用の洗面台はありません。

 

 コップが2つ用意してあり、一方はお水、もう一方には水で薄めたイソジン液が入っています。食事を済ませたそのテーブルで、イソジン液を付けた歯ブラシで歯を磨き、水でうがいをします。うがい後の水は、ガーグルベースという、うがい用の洗面器のような小さな器に吐き出します。

 

  食事をしている方の7~8割くらいが義歯(入れ歯)を装着していたので、その方たちは、いったん義歯をはずしてもらい、歯ブラシで残っている歯を磨いてからうがいをしてもらいます。

 

 義歯の種類も色々あります。僕が想像していた義歯は、全く歯がない人用の総入れ歯で、上下の歯が全てそろっているタイプのもの【THE 入れ歯】と言ったら言い過ぎでしょうか?

 

 その他に、差し歯や部分入れ歯などがあり、金属でつなぎ合せてるものや、歯がないところだけに入れ歯を装着できるように、ワイヤーでつなぎ合せているものもあります。

 しかもそのワイヤーは、結構先が尖っていたりして、義歯を取り外したり洗うときに、指に刺さったりすることもあります。こんな危険な形状のものを、口に入れて大丈夫なのだろうか?と思ったりしました。

 

 素材も様々で、歯茎の部分がプラスティック、金属、シリコン、金、チタンなどでできていたりします。これは想像ですが、素材によって、金額がずいぶんと違うのかな?と感じました。

 

 義歯をはずした時に気づいたのですが、義歯を装着しているときの表情と、外した時とでは、別人とまではいいませんが、ずいぶんと変わる方が多いことに気づきました。特に女性の患者さんは、口元がへこみ、少ししわが増え、かわいらしく?感じる方が多くいました。

水分介助 食事介助 2

     配膳

 配膳車が到着すると、各患者さんの席まで食事を配っていきます。食堂まで出てきて食事をされる方は、ある程度自分の力で食べることができますが、患者さんの中には、介助や援助が必要な方もいます。

 

 片腕に麻痺がある方は、利き腕の方で食べやすいようにトレーの角度を変えたりします。また、麻痺のある方は麻痺側に傾くことがあるため、クッションやタオルを入れて、体幹をまっすぐ維持できるように調整したりします。

 

 握力が弱い方は、お箸を持つことが困難なため、介護用スプーンを使う方もいます。

 

介護用スプーンにも色々な種類があり、とても軽いものや、すくいやすいように、角度が調整されているものや、フォークとスプーンが一体になっているものなど、なるべく快適に食事ができるように、その方の能力の補助的な役割を担ってくれているようでした。

 

 一通り食事のセッティングが終わったら、3階へ戻って、病室配膳が必要な方の援助に向かいます。

 

 3階も同じように、配膳車を移動しながら各病室へ食事を届けます。病室のベッド上で食事をする方は、基本的に食堂まで移動することが困難な方で、それぞれ事情があるようでした。

 

金属カニューレ、両腕拘束、でもご飯は食べる!?

 ある男性の例でいうと、喉には金属カニューレ(※1)が挿入されており、両腕はひものようなのもので、ベッドサイドにくくりつけられている状態で、スタッフが食事介助していました。

 

 どうしてこういうことになったかを先輩介護士に聞くと、「自分で、カニューレを引っこ抜くから」ということでした。カニューレが挿入されてても、食事はできる事を知り、驚きと疑問が沸き起こりました。「うまいこと痰は排出できないし飲み込めないのに、食事はできるの?水分も食物も喉を通っているのに?なぜ?本当にカニューレが必要?」わからないことだらけでした。

 

 なおもその方の存在がとても気になって見学していたら、食事形態が他の方と違っていることに気づきました。食事の内容が全てドロドロになっていたのです。ご飯もおかずもデザートも全てがドロドロ。介助者はスープを与えるように、そのドロドロとした食べ物を口元で持っていくと、その男性は、すするようにして飲み込んでいました。

 

 「おいしいですか?」と聞くと、ニコッと笑って、こくりっと頷きます。「何が一番おいしいですか?」と聞くと、少し困った様子。すると、先輩介護士が、「この人カニューレ入ってるから、しゃべられないよ」(※2)と聞き、困惑しました。「カニューレ入れたらしゃべれないの?じゃーこの男性は、しゃべれないし、両腕拘束されたまま、ベッド上で1日を過ごすの?この人の幸せって一体なに・・・???」またまたわからないことだらけになりました。

  他にもある、食事介助が必要な方

 その他にも、両目とも失明された方や、両手両足が固まってしまって、自力で動かすことは困難だけど、介助するとご飯は食べることができる方や、首から下が全く動かせない、いわゆる四肢麻痺の方や、認知症の方などがおられ、介護者の介助方法は、その患者さんの使える能力、いわゆる残存能力を活かしつつ、事故が起きないよう、その方に合わせて介助する必要があるように感じました。

     配膳と下膳

 患者さん1人ひとりにゆっくりと時間をかけて介助するべきなのですが、介助が必要な方の人数と介助できるスタッフの人数を考えると、介助者が少ない時の方が圧倒的に多く、この日は食堂の見守りを含め、4人のスタッフが30人の患者の対応をしていましたが、見た限りでは、ゆっくりと患者さんに向き合える余裕がないように感じました。

 

 確かに、限られたスタッフの人数で、食事の用意→配膳→食事介助→下膳の流れを約1時間で行うとなると、1人の患者さんに10~15分が限界です。効率的に動くことが求められます。そのようなことを感じながら、食事介助の様子を、見守っているのでした。

 

※1 最近では、あまり金属カニューレは使用されていないようです。現在は、カフ付きのカニューレ、または 発声が可能なスピーチカニューレが主流のようです。)

 

※2 スピーチカニューレは、発声可能です。)

水分介助と食事介助

     勤務4日目

 連勤4日目の日は、連日の初体験業務の上に、がちがちに緊張していたこともあり、さすがに疲れていました。翌日が休みとなっていたため、何とかこの日を無事に乗り切れることを祈りつつ、本日の業務に取り掛かかりました。

 

 この日は入浴や浣腸の日ではなかったため、午前中は患者さん一人ひとりの身体を拭いたり、おむつ交換、いわゆる【清拭=BB=Bed bath】を行いました。

 

 BB終了後、おむつ交換の時に出たゴミ類をポリ袋に入れ、それを1階のゴミステーションの保管庫に捨てに行きます。60人分のおむつを交換するとなると、大きいポリ袋にぱんぱんに詰め込んで、3~4袋分になります。

 

 尿や便、温かいお湯で汚れた部分を洗い流した水分も入っているため、一袋がなんと重いこと!当分の間、下っ端の自分は、こういう雑用業務を率先してやるべきやろな、と思いつつ元の3階に戻るのでした・・・。

     水分介助

 この日指導してくれた先輩介護士は、若い女性でした。次に何をするか聞くと、「水分介助です。」とのこと。水分介助?もうすぐ昼食なのに、水分介助?少し困惑していると、詳しく説明してくれました。

 

 「介助を必要としている高齢者は、発汗、排尿、排便などで予想以上に水分が失われることがあり、定期的に水分を補給しないと脱水状態になります。特に高齢者は、脳の機能が低下しており、喉の渇きを感じにくくなっているので、意識して水分補給をしないといけません。それと、昼食前に、喉の通りをよくすることで、誤嚥(喉詰め)の防止にもなります。」

 

 へ~、若いのにすごい!この子よく勉強してる!と、驚いてしまいました。すると、その先輩は、水分介助を必要としている患者さんの病室へ入っていき、各患者さんに配られたお茶をコップに移し替え、何やら【白い粉】を入れてスプーンでかき回しています。その様子を観察していると、何やらはちみつのようにドロッとした液体に変わっていました。まるで、中華料理のあんかけのような、あのドロッとした感じです。

 

 そのとろっとろのお茶を患者さんの口元へ持っていき、ゆっくりと飲ませていきます。ひと口づつゆっくりと、飲み込んでいる様子を目視で確認しながら、約100㏄ほどのお茶を介助していました。

 「先程入れた白い粉は、片栗粉ですか?」と質問すると、「いえっ、トロミ剤です。」と、無表情で、素っ気ない答えが返ってきました・・・。

     食事介助

 水分介助が終わると、昼食の準備に取り掛かります。まずは胃瘻から経管栄養による食事をする方から準備を始めます。経管栄養を入れる専用ボトルに栄養剤を入れ、ベッドの上の方に天井からぶら下がっている点滴棒と呼ばれている棒があり、それにボトルをぶら下げます。

 

 しばらくしてから看護師がボトルにつながっている管を胃瘻チューブに接続し、食事(注入)が始まります。その方の持病、栄養状態、体重、吸収率などを考慮し、栄養剤の種類や量が違っていました。早い方で約15分、遅い方となると1時間かけて栄養剤を落としていました。残りの約半数の30人がお口から食事をします。

 

 車椅子へ移乗できる方は、2階にある食堂へ誘導し、残りの方は病室でベッドに座った状態で食べることになります。

 

 約10人の患者さんを食堂へ誘導し、決められたテーブル席へ案内後、食事中に食べこぼしがある方には、撥水効果のあるエプロンを用意し、食事が来るまで、音楽を聴きいたり、テレビを見てもらいながら待ってもらいます。

 

 しばらくすると配膳車が各患者さんの食事を乗せて運ばれてきます。その配膳車はよくできており、一つのお膳の収納スペースが、保温と冷蔵ができる機能が付いており、温かい料理と冷たい料理を同時に乗せて移動できるとても便利な機械でした。

入浴介助 初体験

     3日目 入浴日

 初日と2日目のショックを引きずったまま、何とか3日目を迎える事ができました。

この日、指導してくれる先輩介護士は、少し年下の男性でした。今日の業務予定を聞くと、「今日は1日お風呂。午前・午後と分けて、60人入れるよ。体力勝負やから頑張って!」とのこと。

 

 さらに詳しく聞くと、午前中に約40人、午後に約20人入れる予定で、午前中に40人、入れそうになかったら、午後に回すというシステムでした。入浴初日ということもあり、60人が多いのか少ないのか、全く想像すらできなかったため、とにかく先輩に付いていき、言われることを確実にこなしていくことにしました。

     バイタル測定

 まず入浴前に、各患者さんの体温、血圧、脈拍、呼吸数、意識状態を測定したり確認することで、身体状況を把握します。これをバイタル測定と言います。

 

 この時点で、いつもより体温や血圧が高かったり、なんだかの異常が見られた時、また見た感じいつもと様子がおかしいと感じたら、看護師へ報告し、看護師でも判断できない場合は、医師へ相談後、入浴できるかどうかを決定します。

 

 バイタル測定後、異常が見当たらない患者さんを浴室へ誘導していく必要があります。ここは3階の介護病棟で、浴室は1階にあります。寝たきりの患者さんはストレッチャーという体を横にしたまま患者さんを移動させる、車輪付きの簡易ベッドを使って、エレベーターに乗って1階の浴室まで誘導します。

 

     体力勝負の送迎部隊?

 さて、この入浴介助方法ですが、結果的に言うと、かなりしんどかったです。入浴方法、入浴体制及び、勤務体制を説明しますね。 

 

 各施設によって、多少ばらつきはあるかと思いますが、お風呂の種類はだいたい3タイプに分けられると思います。

 

①個浴=一般的な家庭にあるお風呂。

②機械浴(中間浴)=入浴用車椅子での車椅子に座った状態で入るもの。

③特別浴=寝台浴、寝たきりの方がストレッチャータイプのものに寝たまま入るもの。

 

当施設では、①の個浴は使用しておらず、②と③のタイプを使用していました。

 

 病室⇔浴室への移動介助(送迎部隊と呼ばれていました)は、2人で行います。午前中、40人入れるとなると、2人で40往復です。ということは、

病室→ストレッチャー→浴室→ストレッチャー→病室

という作業を、40回行うことになります。

 

 午前中といっても、9:00~12:00の3時間に40人の入浴介助を終わらせないといけないので、体力と時間の勝負になります。いかに効率的に動くかがポイントです。

 

     入浴介助は流れ作業?

 1階の浴室には、洗身洗髪など、患者さんの身体を洗うスタッフが3名いて、その中に必ず1名、看護師の方がいました。おそらく、浴室の事故が起きた時のことや法的なことも含まれていたからだと思います。

 

 浴室へ誘導された患者さんは、その方の身体的な状態により、中間浴か特殊浴に分けられていきます。各機械への移乗が終わると、洗身担当のスタッフが身体を洗っていきます。約2~3分ほど洗身介助を行ってから、お湯につかります。だいたい3~5分で終了です。入浴開始から終了まで、約8分ほどで元の病室へ誘導という流れになります。

 

 入浴といえば、湯船につかって、身体をゆっくりと温め、血行を良くし、疲れを取って、疲労回復を促進するためのものであると思っていましたが、この日見た入浴介助の様子は、限られている時間内に、目立った汚れを洗い落とし、冷め切った身体を急速に温め、温め終わるとすぐに次の患者さんを誘導するという、まさに流れ作業のように見えました。

 

 確かに、ゆっくりと患者さんと向き合い、時間を使って楽しんでもらいながら介助していると、午前中で40人は不可能なように感じました。ただ、「これが入浴なの・・・?」と、心の奥で、またもや叫んでいるのでした・・・。